夫急逝の悲しみを胸に8月の個展へ創作に励む
佐藤 万里子 さん
佐藤 万里子 さん
型を取った石膏の中にガラスを入れ電気炉で加熱する「キルンキャスト」と呼ばれる手法で、タオルや手袋、Yシャツなど、身近にある“やわらかいもの”をガラスで表現する。最初にモチーフにしたやわらかな素材は、看取った母の頭を支えていた枕だった。
「頭の重みでへこんだ部分をみていたら、何とも言えず悲しくなってきて…。その気持ちを表現したいと思ったの」
そのときの作品は1996年「日本のガラス展」で、最高賞にあたる日本ガラス工芸協会賞を獲得し高い評価を得た。
東京藝術大学美術学部工芸科(1963年卒業)では鍛金を専攻。在学中、先輩に誘われカガミクリスタルの工場を見学し、ガラスができる過程を初めて目にした。熱した金属を何度も叩いて形作っていた佐藤さんにとって、息を吹き入れ一瞬で形になるガラスは、新鮮で魅力的だった。
「1400℃を超えて真っ白になったガラスがあまりに美しく、感激しました」
卒業後、佐々木硝子デザイン部勤務を経て1982年に独立。埼玉県朝霞市にガラス工房を設立した。当初から一貫し、作品には藍色を用いている。出身地の徳島県で曾祖父が、染料となる藍玉を作っていたことも影響しているが、実のところ「他の色は調合が難しいんです。藍色は酸化コバルトを溶かせば簡単に作れる。藍の縞模様を重ね合わせ、揺らぎを表現する“モアレ”に今ははまっています」 軽井沢に引っ越したのは2000年。木々の葉が落ちた冬、山荘の北の窓から見えた浅間山が購入の決め手だった。移住の翌年から毎夏、追分のぎゃらりい青で展覧会を開いて今年で15回目。デザイナーの夫佐藤允弥(まさひろ)さんの遺作と、ガラス仲間の上島あい子さんの作品を合わせて展示する(8月6~21日)。
允弥さんは今年2月、家の凍結した庭で転倒し肋骨7本を骨折。2週間の入院の予定が、持病の間質性肺炎が悪化し入院3日目で亡くなった。この春、スケッチを兼ねた長崎旅行を2人で計画していたが、それも叶わなかった。
「本人も私も想定外でした。3カ月経って整理も一段落。三人展に向けようやく制作を再開したところ」と前を向く。止まっていた工房の空気が、ゆっくりと動き出した。
「頭の重みでへこんだ部分をみていたら、何とも言えず悲しくなってきて…。その気持ちを表現したいと思ったの」
そのときの作品は1996年「日本のガラス展」で、最高賞にあたる日本ガラス工芸協会賞を獲得し高い評価を得た。
東京藝術大学美術学部工芸科(1963年卒業)では鍛金を専攻。在学中、先輩に誘われカガミクリスタルの工場を見学し、ガラスができる過程を初めて目にした。熱した金属を何度も叩いて形作っていた佐藤さんにとって、息を吹き入れ一瞬で形になるガラスは、新鮮で魅力的だった。
「1400℃を超えて真っ白になったガラスがあまりに美しく、感激しました」
卒業後、佐々木硝子デザイン部勤務を経て1982年に独立。埼玉県朝霞市にガラス工房を設立した。当初から一貫し、作品には藍色を用いている。出身地の徳島県で曾祖父が、染料となる藍玉を作っていたことも影響しているが、実のところ「他の色は調合が難しいんです。藍色は酸化コバルトを溶かせば簡単に作れる。藍の縞模様を重ね合わせ、揺らぎを表現する“モアレ”に今ははまっています」 軽井沢に引っ越したのは2000年。木々の葉が落ちた冬、山荘の北の窓から見えた浅間山が購入の決め手だった。移住の翌年から毎夏、追分のぎゃらりい青で展覧会を開いて今年で15回目。デザイナーの夫佐藤允弥(まさひろ)さんの遺作と、ガラス仲間の上島あい子さんの作品を合わせて展示する(8月6~21日)。
允弥さんは今年2月、家の凍結した庭で転倒し肋骨7本を骨折。2週間の入院の予定が、持病の間質性肺炎が悪化し入院3日目で亡くなった。この春、スケッチを兼ねた長崎旅行を2人で計画していたが、それも叶わなかった。
「本人も私も想定外でした。3カ月経って整理も一段落。三人展に向けようやく制作を再開したところ」と前を向く。止まっていた工房の空気が、ゆっくりと動き出した。
- No.148(2015年10月) ソニー名誉会長大賀典雄夫人、ピアニスト 大賀 緑 さん
- No.147(2015年9月) 漫画家 みつはし ちかこ さん
- No.146(2015年8月) 遠藤波津子グループ代表取締役社長 遠藤 彬 さん
- No.145(2015年7月) 女優 高田 敏江さん
- No.144(2015年6月) 佐藤 万里子 さん
- No.143(2015年5月) 日本エッセイストクラブ理事長 遠藤 利男 さん
- No.142(2015年4月) アーティスト デビット・スタンリー・ヒューエットさん
- No.141(2015年3月) せせらぎ文庫 主宰 小林 悠紀子さん
- No.140(2015年2月) 作家 久美 沙織さん
- No.138・139(2014年12月) 環境ジャーナリスト 幸田 シャーミンさん
- No.137(2014年11月) 美術評論家 海上雅臣さん
- No.136(2014年10月) オペラ歌手 藤井 多恵子さん
- No.135(2014年9月) さくら共同法律事務所所長 河合 弘之さん
- No.134(2014年8月) コラムニスト 勝谷 誠彦さん
- No.133(2014年7月) 小宮山洋子政策研究会代表 小宮山 洋子さん
- No.132(2014年6月) 株式会社バーディ代表取締役 石原 惠さん
- No.131(2014年5月) テーラーメイド ゴルフ代表取締役会長兼社長 菱沼 信夫さん
- No.130(2014年4月) 作家・ジャーナリスト 佐々木 俊尚さん
- No.129(2014年3月) ギタリスト 寺内タケシ さん
- No.128(2014年2月) ソルトレイク五輪スノーボードハーフパイプ日本代表 橋本 通代さん
- No.126・127(2013年12月) アニメーター 冨永 潤二さん
- No.125(2013年11月) 軽井沢図書館友の会会長 内山 章子さん
- No.124(2013年10月) 写真家 小谷 明さん
- No.123(2013年9月) 小説家・鷹匠 波多野 鷹さん
- No.122(2013年8月) 外交評論家 磯村 尚徳さん
- No.121(2013年7月) 作家・精神科医 加賀 乙彦さん
- No.120(2013年6月) サイクリスト 上原 暢 さん
- No.119(2013年5月) 日本シャーロック・ホームズクラブ関西支部代表 平賀 三郎 さん
- No.117(2013年3月) 軽井沢ホテルブレストンコート総料理長 浜田 統之 さん
- No.116(2013年2月) 画家 大山 美信 さん
- No.114(2012年12月) 『フィリピン医療を支える会』会長・歯科医 林 春二さん
- No.113(2012年11月) 作家 内田 康夫さん
- No.112(2012年10月) ステンドグラス工芸家 臼井 定一さん