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軽井沢新聞 スペシャル 軽井沢が見える万華鏡

軽井沢が見える万華鏡 No.8

Kaleidoscope

 今年の春から初夏にかけて、軽井沢ではタンポポが異常ともいえるほどたくさん咲き、「これでは野の花が無くなってしまう」と心配する声が聞かれました。サクラソウを守るボランティア団体“サクラソウ会議”からも「タンポポの駆除を手伝って」というメールが届いたほど。低温に弱いといわれる西洋タンポポが軽井沢でこれだけ増えるのは、軽井沢の気温が上がっていることと関係があるのかもしれません。一方、樹木に囲まれた湯川の木道散策路や別荘の庭では、タンポポの姿はほとんど見られず、そこには、ルリソウやヒトリシズカ、イチゲなど野の花がひっそりと咲いていました。

 今、日本で注目を集めているガーデン・デザイナーの一人が、英国人のポール・スミザー。彼は軽井沢でも、絵本の森美術館の庭をデザインすることで話題になっています。スミザーの庭園造りを紹介した『日陰でよかった』(宝島社刊)という本には、日陰の庭での植栽の知識が掲載され、軽井沢でよく見かける野の花もたくさん載っているので驚きました。スズランやアマドコロ、ユキザサ、ウバユリ、ギボウシなど、決してタンポポが咲くことのない木陰にひっそりと咲くこの花たちを、スミザーは上手に庭づくりに取り入れています。「日陰のある庭のほうが、奥行きのある美しい庭を、早くつくりやすい。植えられる植物の幅も広い。いろいろな演出もできる」とスミザーは述べています。

 軽井沢に移り住んできた人たちの間ではガーデニングが盛んに行われているようです。せっかく軽井沢で暮らすなら、ガーデニングのためにわざわざ木を切ったりせず、木陰でも可憐に咲く野の花を生かした庭を造ることをお勧めします。カラマツの下に咲く、別名ピンクのスズランとも呼ばれるベニバナエンレイソウや、広葉樹の下に咲くレンゲショウマは可愛らしい姿で人気があります。また、野の花を描く画家・深沢紅子さんの絵で知られるフシグロセンノウは朱色が美しく、この花のあるところ、黒い大きなアゲハチョウがやってくるという楽しいおまけつき。立原道造の詩にも出てくる水引草も木の下にたくさん出てきます。今まで取材した中で、私が一番感動した庭は堀多恵子さん(作家・堀辰雄夫人)の庭でした。新築したとき花の設計図を作り、大切に育ててきた花木を植えかえて造った広い庭ですが、その花はすべて軽井沢の野の花だったのです。

(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)
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