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軽井沢新聞 スペシャル 軽井沢が見える万華鏡

軽井沢が見える万華鏡 No.18

Kaleidoscope

 5年にわたり工事を行っていた東京駅が10月1日グランドオープンし、マスコミを賑わせています。見事に甦ったその美しい姿に驚いた人も多かったことでしょう。
 更に驚くべきは、駅としての機能が充実していることです。甦った東京駅は、「古いものは壊し、建て替えることによって機能的にする」という、今までの建築の常識を覆し、歴史的建造物を活かしながらも機能の充実が可能であることをはっきりと示しました。
 1980年代には東京駅が壊されるという話もありました。駅舎を壊して高層ビルに建て替えるという話が本格化し、赤レンガ駅舎保存の市民運動が起こりました。政府は専門家の意見も聞き、保全を決定。2003年、国の重要文化財に指定されたのです。
 壊してしまったら、その歴史の重みは二度と造り出すことはできません。そっくりに造ったとしても、重厚感、存在感は決して同じようにはなりません。「壊されなくてよかった」威風堂々とした東京駅を見て、心からそう思いました。
 駅は町の顔とも言えますが、軽井沢の駅舎はどうでしょうか。今年の10月で長野新幹線は開業15周年。軽井沢町が建てた現在の駅ビル「さわやかハット」も15年を迎えます。以前の軽井沢駅を知らない人も多くなってきていますが、赤い瓦屋根の白い駅は「高原の小さな駅」の趣がありました。新幹線用の駅建設のため取り壊しになるとき、駅舎保存の署名運動が起こりました。その結果、軽井沢町は当時、各地で造られたペデストリアンデッキ(高架の歩行者回廊)を備えた駅ビルを建設し、以前の駅を別の場所に復元して駅舎記念館として残しました。
 しかし、このペデストリアンデッキは厳寒の軽井沢には適していなかったようです。降り積もった氷雪を融かすためにデッキの路面下に電熱線を敷いて、かなりの費用をかけたにもかかわらず、真冬にデッキの上を歩いている人はほとんど見かけません。しかも、デッキの下は日陰になり冬は凍って、車の運転も危険な状態に。ビルの床には高価な御影石や大理石を貼ったのに、凍って滑る人が続出。ついに数ヶ月後、町役場はカーペットを敷きました。現在の駅の状態しか知らない人に「グリーンのカーペットの下は御影石と大理石」と言うと驚きます。
 中軽井沢駅は交流施設がまだ建設中ですが、今度はそんな失敗のないようにと願っています。

(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)
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