「学び」「つながり」日ごろから 東日本大震災を経験した元中学教諭が講演
岩手県釜石市の釜石東中学校の教諭として東日本大震災を経験した、糸日谷美奈子さんの講演会が2月10日、軽井沢町中央公民館であった。消防庁の防災意識向上プロジェクトの一環で、町が主催し約40人が参加した。
糸日谷さんは震災直後の避難の様子や、災害後の心理状態の変化などを伝え、「東日本大震災は14年前の話だが、このあと大きな災害が起こるとすれば今は震災前。噴火災害などについて学んで準備してほしい」と呼びかけた。
2011年3月の地震発生直後、生徒らと事前に決められていた学校より高い位置の避難場所へ逃げ、ほっとしたのも束の間、そこにも津波が迫り「パニックになりながら山に向かって走った」。街が津波にのまれ「俺の家がもうない」と泣き崩れる生徒に、「何も言葉をかけてあげられず、ただ背中をさすることしかできなかった」。
「『釜石の奇跡』は、奇跡じゃない」
釜石市では震災により千人以上が命を落としたが、学校管理下の小中学生は全員が無事だった。それが「釜石の奇跡」と報じられたことに「すごく苦しい気持ちになった」と糸日谷さん。
同市の小中学校では、日頃から地震や津波などの防災学習に多くの時間を充てていたため、「あれだけ学んだのだから当たり前。奇跡じゃない」と声をあげる生徒もいたという。「学んだことをもっと地域に伝えられていたら、千人の人は亡くならなかった」。
災害への備えとして、備蓄品を用意することや知識をつけることに加え「地域の繋がりは大事。困ったときに声をかけ合える関係を日頃から作ってほしい」と話した。
東日本大震災発生直後の経験などを伝える語り部の糸日谷さん。