スキーバス事故から9年 遺族らが慰霊碑に献花「再発防止への思いより強く」
乗客の大学生13人と乗員2人が死亡し、26人が重軽傷を負った、軽井沢スキーバス転落事故は1月15日、発生から9年を迎えた。
被害者遺族による「1.15サクラソウの会」はこの日、軽井沢町役場で「安全安心なバス運行を誓う集い」を開いた。古川康国土交通副大臣や、日本バス協会の清水一郎会長ら、関係機関から約40人が出席し、事故の再発防止に向け意見交換した。
冒頭のあいさつで古川副大臣は、貸切バスの安全対策の強化のため、2024年4月から点呼やアルコール検知器使用時の動画・画像保存、デジタル式運行記録計導入が義務化されたことにふれ、「輸送の安全に向けた啓発活動を継続的により一層進めていく」と話した。意見交換は非公開だったが、事故を風化させない取り組みの継続について、思いを共有したという。
その後、遺族らは事故現場の慰霊碑「祈りの碑」を訪れ献花し、黙祷を捧げた。寛さん(当時19)を亡くした遺族会代表の田原義則さんは「時間が経てば経つほど、再発防止への思いはさらに強くなっている」。慰霊碑を前にし「あのような事故が2度と起きないように、少しでも働きかけをしていくことが、残された遺族の役割だと改めて思った」と語った。
衣里さん(当時19)の父、池田彰さんは慰霊碑に、「寒くないか」「お父さんもがんばっているよ」などと声をかけたという。事故が風化していることを受け止めつつも、公共交通の利用者に対しては「この事故を頭の片隅に置いてもらって、安全への思いだけは忘れないでほしい」と呼びかけた。
西堀響さん(当時19)の父は「年末から1月15日にかけては、普段の生活をしていても、事故のことを当然思い出すし落ち込む時期」。響さんの通った東京外国語大の友人が活躍している話を聞くと「息子がいたら今どうなっていたか、それが一番思うところ」と話した。
陸人さん(当時19)の父の大谷慶彦さんは「この時期になると、陸人と一緒にスキーに行きたい思いが強くなる」。事故の風化防止のため、毎年献花に訪れている軽井沢高校の生徒へ感謝を示し、「9年が経過し事故を知らない若い子も多い。遺族としても啓発活動に協力したい」と思いを話した。
慰霊に訪れた軽井沢高校の生徒。今年は生徒会が事故について学ぶ学習会も開いた。
軽井沢スキーバス転落事故
乗員、乗客41人を乗せ、長野県斑尾高原スキー場へ向かっていた大型貸切バスが、2016年1月15日1時50分ごろ、国道18号碓氷バイパスの下り坂でカーブを曲がりきれず、ガードレールをなぎ倒し道路脇に転落。乗員・乗客15人が死亡し、26人が重軽傷を負った。事故をめぐり、バスの運行会社の社長ら2人が業務上過失致死傷の罪に問われ23年6月、長野地裁で実刑判決が言い渡された。2人は判決を不服として控訴している。