馬取のほ場整備計画地、環境調査経て希少植物の移植保全を決定 現地保全望む声も
長野県が農振農用地を再整備する、馬取山田地区ほ場整備計画地(17.8㌶)の一部に生育する希少植物の保全について、11月27日の自然保護審議会で観光経済課の職員が「移植で行うことを決定した」と報告した。移植の時期や手法の検討を進めつつ、ほ場整備の事業発注を年内に行い、2024年春には着工の見込みだという。
計画地を巡っては、町内の自然保護団体「サクラソウ会議」が2021年12月、アサマフウロをはじめとした希少植物群が生育しているとし、一部を「自然生態園」のような形で保全することなどを求める請願を提出。町議会は趣旨採択(願意は妥当だが実現性は難しい)とし、希少植物の移植や専門家の意見を求める意見を付けた。
県は町の要望を受けて23年春から秋にかけ、同計画地の環境調査を実施。この日の町の報告によると、レッドデータ等の絶滅するおそれのある生物を確認したが「法令、条例にもとづき、保護が必要な生物、移植が不適当とされる植物は発見されなかった」。移植先についても地下水位、土の栄養状況がほ場内と類似しているとし、「十分移植適地になりうる」と説明した。
審議会の委員からは、同計画地は湿地としての多様性が高いとし「一回壊したものは、再び勝手に戻ることはない」と計画の見直しを求める意見のほか、22年12月に湿地生態系としての保全を望む署名(2744筆)が町に提出されたことに触れ「住民の意見を無視できない」と、環境調査の結果を公表した上で、住民を交えた話し合いの場を求める声もあった。
一方で、移住者増加により、軽井沢では農業がやりにくくなっている現状があるとし「『軽井沢にもかつては農地があった』とならないよう、希少な植物も農地も守ってほしい」。「(ほ場内農地のすべてを整備したいと要望している)地権者の意志が何より優先されるべき」という委員の意見も。
審議会を経て、観光経済課の担当者は「計画に変更はなく、希少植物は移植で進める」。土屋町長も12月7日、町議会再開のあいさつで、確認された希少種は移植で保全していくことを、地権者や担い手に対して自ら説明したことを報告。「引き続き県との連携を図りながら、種の保全を図りつつ事業実施に努めていく」とした。
馬取山田地区のほ場整備計画地