堀辰雄文学記念館「野いばら講座」室生犀星の孫洲々子さん、祖父を語る
堀辰雄文学記念館は5月24日、室生犀星記念館(金沢市)名誉館長で犀星の孫、室生洲々子さんを迎え講座を開いた。洲々子さんは「軽井沢の家ー祖父犀星の日常ー」をテーマに、母の朝子さん(犀星の長女)から伝え聞いた話を中心に、親族だからこそ知る犀星の人となりについて話した。
洲々子さんによると、犀星は戦中から戦後(1944~49年)にかけ、家族とともに軽井沢の別荘に疎開。脳溢血に倒れ半身不随だった妻のとみ子は当初、軽井沢での疎開生活に難色を示した。それでも、堀辰雄が軽井沢へ疎開していることを知ると「あの体の弱い辰ちゃんが大丈夫なのだから、私も軽井沢で過ごせるはず」と、疎開を決めたエピソードを紹介。疎開後に東京大空襲があったことから「ある意味、堀さんが祖母を救ってくれた」と洲々子さん。
また、愛猫家だった犀星は、軽井沢の大工から譲り受けた猫に「カメチョロ」(信州でトカゲを表す)と名付け大切にしていたと言い、「神経質で机周りはいつもピカピカだったが、仕事机に猫が乗っても怒ることはなかった」と話した。
講演を聞くため山梨県市川三郷町から訪れた三枝稔さんは50年前、『風立ちぬ』を読んでから堀辰雄のファン。「辰雄と犀星の関係を知ることができる良い機会になり、来た甲斐がありました」と嬉しそうだった。
堀辰雄文学記念館は北陸新幹線延伸を記念し、犀星と辰雄の交流を紹介する企画展「堀辰雄と室生家の人々~師・室生犀星との交流を中心に~」を6月30日まで開いている。