作家正宗白鳥の文学碑 旧軽井沢山中から雲場池近くへ
戦中戦後を軽井沢で過ごした作家正宗白鳥(1879〜1962)の文学碑が、旧軽井沢北部の山中から、雲場池近くの白鳥の旧別荘敷地の一角に移設され5月16日、除幕式があった。多くの人に見てほしいという、遺族の意向を踏まえ町が移設した。
碑の一帯は白鳥のおいの妻にあたる一級建築士の正宗量子さんがデザイン。石碑のある場所は浅間石などを積み上げて高さを出し、もともとあった特徴的な藤の蔓を生かして設計。高齢者や車椅子利用者も訪れられるよう、土の階段とは別に手すり付きのスロープも整備した。石碑の脇には、白鳥夫人が軽井沢から大田区の本宅へ移植した野ばら(花さうび)も移した。
文学碑は白鳥没後の1965年、作家の川端康成、丹羽文雄らが発起人になって設置。十字架型の黒御影石に、白鳥が愛唱した「花さうび 花のいのちは いく年ぞ 時過ぎてたづぬれば 花はなく あるはただ いばらのみ」というギリシャの詩の和訳が刻まれている。碑の下に納められていた白鳥愛用の万年筆や全集も、移設後に埋めなおした。万年筆は字が書ける状態でインクが残っていたという。
量子さんは「誰でも来てもらえる場所に移って、正宗白鳥もお喜びになっていると思う」と話した。町では文学碑に隣接する駐輪場の整備も計画している。
文学碑の一帯をデザインした正宗量子さん(中央)。除幕式にて。