軽井沢ゆかりのフランス人浮世絵師ジャクレー展 国内初、全作品162点を公開

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馬の鈴草、トンダノ、セレベス島 ポールジャクレー(遺族所蔵)©Paul Jacoulet 古九谷青手に倣って青、緑、黄の三色で摺った。

 8月1日から軽井沢町追分宿郷土館で「軽井沢を愛したフランス人浮世絵師ポール・ジャクレー全木版画展」が開催されている。ジャクレーは1944年から16年間、軽井沢にアトリエを構え制作していた。世界的にもファンの多い浮世絵師で、全木版画作品162点を公開するのは日本で初めて。軽井沢町では「ポール・ジャクレー没後60年特別企画」として、前期と後期の2期に分け作品のほか写真、書簡、遺愛品なども展示する。

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オープニングセレモニーでは、仏大使らによるテープカットも行われた。

遺族や仏大使夫妻も列席してオープニング

 8月1日に行われたオープニングセレモニーにはジャクレーの遺族、稲垣・ジャクレー・テレズさんやフランス大使フィリップ・セトンさんと夫人のジャンヌ=マリー・セトンさんらが出席した。

 続くシンポジウムは雷雨による停電の中で、美術史評論家の猿渡紀代子さん司会で遺族やケ・ブランリー美術館の元館長で文化参事官のステファンヌ・マルタンさんらがジャクレーについて語った。稲垣・ジャクレー・テレズさんは「軽井沢で開催できて感慨深い。作品を求めに来た人に、ポール・ジャクレーは直接説明していた。今回の展示では自身の説明も添えているので、より深く作品をご覧頂けると思う」と語った。

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軽井沢の自宅前1952年3月56歳(遺族提供)

浮世絵の技法、鮮やかな色彩

 ポール・ジャクレーは1896年にパリで生まれ、父の仕事の都合で3歳の時に来日。日本の風土になじみ、美術や書道を学び、ヨーロッパで絵画の指導も受けた。浮世絵の手法を取り入れながらもフランス的な感性で独特の木版画を創り出した。日本をはじめ、南洋の島々や朝鮮半島に暮らす人々を独特な感性でとらえた作品は、早くから海外で高い評価を受けている。

 2013年にはフランス、パリのケ・ブランリー美術館でも大規模な作品展が行われ、ジャクレーを知ったフランス人からは称賛の声が寄せられた。

第二の故郷、軽井沢で

 1944年、軽井沢に疎開したジャクレーは、アトリエを構え、多くの作品を制作した。ロサンゼルスやニューヨークなどで個展を開催し、評判となった作品は高値で売れるようになった。

 敬虔なクリスチャンだったジャクレーは、得た収入の多くを聖パウロ教会や幼稚園に寄付した。生涯のすべてを日本で過ごし、軽井沢のアトリエでたくさんの作品を生み出したジャクレーは、1960年3月、第二の故郷、軽井沢で深い眠りについた。享年64歳だった。

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<関連イベント>

多色摺木版画体験

☆9/4(土)10:00〜12:00、13:00〜15:00

定員:各回10名 参加費500円

教養講座「フランス人浮世絵師ポール・ジャクレーと軽井沢」

☆10/2(土)13:30〜15:30

講師:猿渡紀代子さん

定員:30名 参加費:入館料のみ(受付開始9月1日)

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軽井沢町追分宿郷土館

●入館料 一般400円 小中高生200円

●9〜17時

●問い合わせ TEL0267-45-1466

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