Kaleidoscope

軽井沢が見える万華鏡 №4

 覚えている方も多いのではないでしょうか。旧軽銀座通りの中心にあった「軽井沢ベルコモンズ」、そのオープンのポスターがリスの写真だったことを。梢に乗ったかわいらしいリスは、軽井沢の象徴として写し出され「OPEN」の文字と共に、軽井沢のあちこちに貼られていました。平成15年には町民から「軽井沢町の獣」として選ばれたニホンリス(ちなみに町鳥はアカハラ、町木はコブシ)ですが、「リスの姿を見かけなくなったわねぇ。昔はたくさんいたのに...」そんな声が数年前から聞かれています。原因は色々あるにしても、軽井沢の林がどんどん伐採されていったことも原因の一つであることは否めません。2月に行われたイベント「リスの痕跡を探そう」(2面参照)に私も参加しました。風越公園周辺の林の中でアカマツやクルミの実をかじった跡をたくさん発見し、「よかった、ここにはまだリスがいる」とホッとしたのでした。リスや野鳥のいる軽井沢の環境は大切にしたいものですね。

 3月上旬、単行本「文学者たちの軽井沢」が刊行の運びとなりました。軽井沢という地が文学とゆかり深いということは取材を通してずっと感じてきたことですが、旅行してみると、地方の小さな町でこれだけ文学者たちが関わっているというのはなかなか無いということに気づきます。作家の別荘がたくさんあることや、軽井沢を描いた作品が多くみられるということだけではなく、作家たちの交流の場として軽井沢は大切な所だったということに大きな意味があります。例えば室生犀星。故郷金沢には養家先となった雨宝院や文学記念館があり、居を構えていた東京都大田区にも足跡が残っています。しかし、犀星がいちばん作家仲間と交流し、楽しい時間を過ごしたのは軽井沢だったのです。軽井沢への思い入れの深さは、故郷金沢からの文学碑建立の申し入れを断り、自力で文学碑を軽井沢の二手橋付近に建てたことでもわかります。

 犀星に限らず、「多くの作家たちにとって軽井沢がなぜ、大切な場所であったのか」を知ることは、軽井沢の魅力を知る手がかりとなることでしょう。

(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)

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