127年目の軽井沢 Vol.2
喫茶店のオーナーが話していたことで気になることがあった。
「昨年の秋は、大型のダンプカーが1日何台も通ってましたよ。1000m林道の大工事でね」
「1000m林道の大工事?何ですか、それ?」
「川田さんは外国に行ってたから知らないでしょうが、ビル・ゲイツの別荘の工事という噂ですよ」
「え、あのビル・ゲイツ?」 さっそく、その場所を聞いて行ってみると、広大な土地が大きな白いカバーに覆われていた。ダンプカーが来るたびに蛇腹式のドアが開いて中が見えた。千ヶ滝の友人の話では6千坪の広い森はすべて木が切られ、小高い山の土を削って運び出していたという。
「ここにいたリスや野鳥、ムササビたちはどうしたんでしょう」
川田さんだけでなく、軽井沢を愛する人なら、きっと、誰もがそう思ったことだろう。
「昨年の秋は、大型のダンプカーが1日何台も通ってましたよ。1000m林道の大工事でね」
「1000m林道の大工事?何ですか、それ?」
「川田さんは外国に行ってたから知らないでしょうが、ビル・ゲイツの別荘の工事という噂ですよ」
「え、あのビル・ゲイツ?」 さっそく、その場所を聞いて行ってみると、広大な土地が大きな白いカバーに覆われていた。ダンプカーが来るたびに蛇腹式のドアが開いて中が見えた。千ヶ滝の友人の話では6千坪の広い森はすべて木が切られ、小高い山の土を削って運び出していたという。
「ここにいたリスや野鳥、ムササビたちはどうしたんでしょう」
川田さんだけでなく、軽井沢を愛する人なら、きっと、誰もがそう思ったことだろう。
第4 (1)自然保護対策
ア 野生動物並びに風致及び良好な環境の保護を図り、事業地及びその周辺の環境保護に努めること。
ア 野生動物並びに風致及び良好な環境の保護を図り、事業地及びその周辺の環境保護に努めること。
(囲み内は軽井沢自然保護対策要綱)
中軽井沢に住む柳沢純さん(仮名)は、噂を聞いて現場を見に行った。噂では6千坪の土地を徐々に広げて1万坪にし、地下3階でプールやヘリポートもできるという話だった。どこまで本当かわからないが、広大な地形が変えられていることは事実だった。
第4 (1)自然保護対策
イ 事業地の植生及び地形その他の原状は、できる限り残存させること。
ウ 道路、給排水施設、その他の工作物の設置にあたっては、土地の形状変更、立木の伐採その他の現状を改変する行為を最小限にとどめ、施工のためにやむを得ず改変された工作物以外の土地は速かに原状を回復すること。
イ 事業地の植生及び地形その他の原状は、できる限り残存させること。
ウ 道路、給排水施設、その他の工作物の設置にあたっては、土地の形状変更、立木の伐採その他の現状を改変する行為を最小限にとどめ、施工のためにやむを得ず改変された工作物以外の土地は速かに原状を回復すること。
工事の看板を見ると、建築主は『株式会社ピーエムリゾート』、住所は東京・新橋になっている。上京の際、その場所へ行ってみたら、住所のビルの中には『ピーエムリゾート』という会社は見当たらなかった。一方、知人の不動産業者は『ピーエムリゾート』の謄本を調べたが、社長は中国系の人物だったと教えてくれた。軽井沢の不動産業者の間では「あれはビル・ゲイツじゃない。買ったのは中国人だ」という噂が広まっていた。
個人の別荘としての建築申請にしては、あまりに大規模の開発だと柳沢さんは思った。個人だとしても、敷地6千坪、建坪200坪という数字は小規模、中規模を超え大規模に違いない。しかも、森を壊し地形まで変えてしまっているのは、明らかに自然保護を目的として制定された自然保護対策要綱の精神に反している。
大規模開発の場合、第3条の(9)によれば、土地の形質変更を行う面積が300㎡以上、それにより生じる擁壁の高さが1.5m以上のものは「事前協議対象土地利用者」となり、町民や近隣の土地所有者などに土地利用行為の内容や必要事項を説明しなければならない(第8条)。
「事前協議の説明会を開くと、近隣から反対されることもある。個人の別荘で届ければそうした面倒なことがないからだね」というのが近所の長老M氏の見方だった。
「建築主は正体不明。大規模開発なのに、個人の建築物として申請して面倒な手続きを省こうとしているのは、どう考えてもおかしい」柳沢さんは納得のいかないという顔でK氏を見た。
(次号へ続く)
(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)