127年目の軽井沢 Vol.8

(前号までの内容)
300m²の土地の木を切るときは町役場に届け出なければならない。しかし、メッシュ方式というものがあるため、並木が簡単に切られてしまうことに町民の今井さんは気づいた。さらに木の伐採についてはもう一つ問題があった。



「300m²以上の土地の木の伐採のことを届け出ると、どうなるんですか」と今井さんは、町役場生活環境課に尋ねた。「植栽計画書を出してもらえば、伐採はOKになります」と窓口の担当者。「計画書通りにしたかどうか、あとでチェックに行きますか」と更に尋ねると、その若い担当者は「毎年、100件以上の申請があるので、とても見に行けません」と正直に答えた。「調べないのであれば、紙切れ1枚の計画書さえ出せば切ってよいということなんですね」今井さんは、林が消えて棲みかを失う小動物たちを思い憤慨した。

 その話を聞いて私も生活環境課に行き質問したが、やはり答えは同じだった。「見に行かれないって...これはあなた達の仕事でしょ」と怒ると、その若い職員は「それじゃ、もっと、職員を増やすように(町長に)言ってくださいよ」とまで言うので驚いた。「計画書どおりに行ったと証明する写真を何枚か提出させたらどうですか。それなら調べに行かなくても済むじゃないですか」と提案しても、「写真を出せなんて言えませんよ」と否定的。「じゃあ、計画書どおりかどうかの確認はどうするんですか」と問い詰めると「信用するしかありません」。これには呆れてしまった。

 チェック機関がないのは大きな問題だ。これだから、軽井沢の緑がどんどん失われてきているわけだ。軽井沢町に自然保護対策要綱という大きな要(かなめ)があっても、職員にチェックする気持ちがないのでは意味がない。 

 一方、町民の側にも問題があった。「自然保護対策要綱の内容をよく知らない」「別荘地の決まりだから、自分たちには関係ない」と思っている人がたくさんいる。数年前に、追分で300m²の土地の木が皆伐された様子を『別荘地が危ない』というタイトルで記事にしたことがあったが、その土地の持ち主は軽井沢に何十年と暮らしてきた地元の人だった。伐採するときの届け出のことは全く知らず、所有地だから自由にできると思っていたという。

(次号へ続く)



広川小夜子



※「127年目の軽井沢」の127年とは、A.C.ショーが軽井沢を避暑地として見出してからの歳月。

ph_201311-01.jpg300m²以上の土地の木の伐採は
け出なければならないが、メッシュ方式では
道路際の並木は切られることが多い

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