【お店の履歴書】新人の気持ちを忘れず、 訪れる人に寄り添い続ける 高橋薬局
オレンジ色の外壁に緑色で書かれた「高橋薬局」の文字。この外観に親しみがある人も多いだろう。昭和34年から61年間営業した店舗は、令和2年に国道を挟んだ向かい側に移転。オーナーの高橋宏己さんを中心に家族一同で営んでいる。
小諸市出身の父・英夫さんは、大阪にあるテイコク薬局へ丁稚奉公へ行き、戦中はそこで学んだ知識を元に衛生兵のようなポジションで兵役についていた。終戦後、軽井沢の井出医院で医師の手伝いをしたのち昭和26年、「高橋薬店」を開業したが、同年に起きた沓掛の大火で、店舗は焼失。再建を余儀なくされたという。
宏己さんが東京で薬科大学を卒業し戻ったのは昭和50年。「卒業後すぐに戻らず、ギターを弾いて稼いでいました。でもそれでは生活できないと思い帰郷したんです」と目を細める。
昭和52年に長野県薬剤師会が企画した漢方の藤本肇先生の講演を聞き、日本人の体や気候に合わせて発展してきた漢方に感銘を受けた。自身も勉強を始め現在に至るまで「漢方相談」を行い、1日に2、3人は煎じ薬や刻み薬を求める人が来局する。
過去には薬局のリニューアルオープンで雑貨なども販売したことがあるが「薬局は心や体に病を持つ人が来るので、基本的に宣伝する職業じゃない」と思った宏己さん。「でも良い品物は紹介したいと思う。日々葛藤です」と胸の内を明かした。
訪れる人に忠実に向き合い対応するため信頼も厚く「おかげで良くなったと言われると嬉しい。職業人冥利に尽きます」という。世代交代を考えながらも、まだまだ現役で店頭に立ち利用客の健康を支え続けていく。
軽井沢町中軽井沢3-6 TEL0267-45-5063
2020年に現在の場所へ。白い外観が目を引く。
個別に分かれた投薬ブースで、漢方相談などを続けている。