【お店の履歴書】戦前の自転車店からレンタサイクルへ 「市村輪店」
軽井沢駅入口交差点のすぐ近くに店を構える市村輪店。国道18号線が整備される前の昭和9年、創業者の市村晴次さんは夫婦で豆腐店を構えていた。隣にあった自転車販売店が閉まると聞き、昭和10年代に晴次さんが引き継いだのが市村輪店の始まりだ。
2代目の隆さんの代で貸し自転車を開始。別荘や保養所に来る客の要望で自転車を届けていた。町内に10軒あった自転車店で組合を作り軽井沢駅と中軽井沢駅前のテントで始めた「駅レンタサイクル」は、新幹線の着工前まで続いた。全盛期の頃はプリンスホテルに持ち込みで約800台、その他で約300台を店頭で貸し出したという。
自転車を整備するオーナーの市村隆幸さん。自転車技士の資格は5年ごとに書き換えがあるそう。
現在店に立つ隆幸さんは3代目で、10年ほど前に自転車技士を取得。ヘルメット着用努力義務にも対応し、希望者にはヘルメットの貸し出しも始めた。「10人程の団体で来た台湾の方の一人が貸したものとは別の自転車で帰ってきて、後になって本通りにあるお店から『市村さんの自転車がある』と連絡を受けたことがありました。乗り間違えの経緯と無事戻ったことを本人にメールしたら、日本に留学している娘さんがお菓子を持ってわざわざ謝りに来たのは印象深いです。今の自転車台数?それは企業秘密です」と笑う隆幸さん。安心して自転車を借りられるよう整備して、来店客を迎えている。軽井沢町軽井沢東11-4 TEL0267-42-2484
現在の場所へは昭和46年に移転。以前は現在の本通りから一本西の古い本通り沿いにあった。