【お店の履歴書】天然氷の池から温泉旅館への転身「ゆうすげ温泉旅館」
中軽井沢から国道18号を小諸方面へ行くと、左手にあるゆうすげ温泉。昭和48年に荻原弘さんが開業した。「温泉に興味があった祖父が地質調査をしたところ、温泉が出るということで現在の場所に開業したそうです。昔は大きな池で天然氷を作って販売していました。別の池には源泉を入れて露天風呂にしたという話も聞きました。父の代ではテニスブームもあり、池をテニスコートにしました。当時から20年以上通い続けてくれるお客様もいて、私を見て『あんなに小さかったのに』と言われることもあります」と話すのは3代目の豊さん。調理師学校を出て山梨県で働いた後、平成29年に後を継ぎ、旅館の経営と宿泊客の料理を作っている。隣接する「川魚料理ゆうすげ」は、温泉旅館の開業よりも以前に、祖母のキヨさんが主に営んでいた。温泉旅館は父、川魚料理は父の弟が継ぎ、兄弟で運営していたという。
温泉旅館を開業してまもなく軽井沢の温泉組合ができ、星野温泉との付き合いもあった。「この場所にゆうすげの花が咲いていたらしく、屋号はそこから付けたんじゃないかな」と豊さん。旅館はプロテニス協会の理事だった故平野三樹さんが長年合宿所として利用していて、今でもその教え子が訪れる。
インバウンド客も増え時代と共に通信設備なども整えてきたが、建物は残していきたいという豊さん。館内には建物とマッチするアンティークやレトロゲームなども置いている。「今後はお風呂に力を入れて、大きくできたらいいと思います」と、温泉旅館を守っていく考えだ。
軽井沢町長倉古宿4404 TEL0267-45-6117
雪景色もよく似合う旅館の入り口で、薪ストーブを焚く香りが立ち上っている
蓄音機や古いゲームの筐体など、古く貴重なものが並んでいる。