【お店の履歴書】職人の仕事を守りたいという 思いから始まった草木染
旧軽井沢 草木屋
植物を染料に、草木染や木版画などを制作している草木屋。町内では1937年、旧軽井沢の近藤長屋に出店してから現在まで、何度か移転しながら営業を続けている。
明治に入ってきた合成染料により、草木染や和紙の職人さんの仕事が激減。創業者の山崎斌(あきら)さんが長野県麻績村で職人を集め、東京赤坂で1930年に出店したのが始まりだ。
軽井沢への出店は、創業者の知り合いだった近藤長屋のオーナーに誘われたのがきっかけ。4代目の美季さんは「創業時は定まっていなかった染め方も、2代目青樹の頃に定まり今の私たちの『草木染』が確立しました」と話す。自身は日本画が好きだった2代目の影響もあり日本画科を専攻。卒業の時にルーツである染の仕事に興味を持ち数年前から店を引き継いでいる。
月明紙という和紙に草木染の柄が施されたハガキは創業時からの商品。避暑地から送る暑中見舞いに使う人が多く、毎年皇室からもお忍びで買いに訪れたという。「その土地にある山野の美しさを大事にする」ことが信念だという草木屋は、土地で採れたもので染めるだけではない。「その土地の植物を描くことも多く、特に父は風土に根差した草木染にこだわっています。軽井沢だとワレモコウは染にも絵柄にも使います。花は深い赤ですが染めると綺麗な黄色になります。私も着物の柄を染めるのに使っています」と、美季さんの中にも信念が受け継がれている。
子どもの頃にはまだ近藤長屋があり夜遅くまで赤ちょうちんが灯る旧道を覚えているという美季さんは、伝統ある草木染を受け継ぎながら、催事やデザインフェスタにも積極的に参加している。「出店すると他のアーティストさんからコラボのお声がけをいただくこともあります。草木からこういう染ができるということを知ってもらえたら嬉しいです」と、新しいアプローチで草木染を守っている。
軽井沢町軽井沢754 TEL090-1797-1588
4代目の山崎美季さん。時代に合わせてTシャツや日傘などの新しい展開も考えているという。
近藤長屋時代の貴重な写真。避暑に来た別荘客などが旅の便りを出すため、便箋などを求めて訪れることが多かった。