【お店の履歴書】軽井沢で天然氷を 100年以上作り続ける
喫茶シブレット 渡辺商会
昭和62年に旧軽井沢銀座商店街で、かき氷がメインの喫茶店としてオープンした喫茶シブレット。その礎は明治20年代、創業者の渡辺半九郎さんが天然氷の製造販売を始めた事だった。「昔は肉を買うにも当然切り売りではなく、発地や馬取あたりで牛を一頭買って何人かで分ける。その『肉を保存する冷蔵庫用の氷を作って欲しい』と曾祖父が、ショーさん本人かはわからないけれど宣教師さんから言われたそうです。それで池を作って冬の間に氷を作り、おがくずなどで保冷をする方法を教えてもらって。東京オリンピックの頃まで別荘の人たちに冷蔵庫用の氷の配達をしてきました。それ以降は電気の冷蔵庫ができたからね」と話すのは、現オーナーで4代目の武文さん。
その後は大手企業のパーティーや別荘の人の飲料用として氷の配達を続けてきた。長年開催されていた「軽井沢氷まつり」に氷を提供したこともあったが「年ごとの気温変化で氷の出来具合が変わるんです。結構大変だったから、後半は参加しませんでした」と武文さんは笑う。
軽井沢が観光地として人気が出始めたころ、喫茶シブレットを開店。奥様の末子さんが調理師免許を持っていたこともきっかけの一つだった。「せっかく氷があるからかき氷のお店でもやりましょうって、気楽な気持ちで始めました。料理を出した時期もあるけれど、今はカレーだけ。シフォンケーキは私が早起きして焼いています。美味しいって食べてくださる方がいるから嬉しいわね」。かき氷を作るのも末子さんの仕事。長年の経験から氷を削る機械の調節をして、ふんわりしたかき氷を作り続けている。
現在の氷需要は99.9%がお店でのかき氷で、たまに別荘へ飲料用の氷を届ける。「天然氷だと水質検査で『使えない』と言われてしまったらお店も全部おしまい。自然が相手だから大変だけど、体に気を付けてやっていきます」
軽井沢町軽井沢668 TEL0267-42-2222
武文さんの自宅があるこのエリアを昭和60年頃に整備。一番奥に喫茶シブレットを構えた。
店内の梁などに使われた木材は、江戸中期から武文さんの家族代々が過ごした家の物を再利用。「色を塗ったりせず、囲炉裏などでいぶされたそのままの状態です」