【お店の履歴書】都心の大型店から 隠れ家のような喫茶店へ
新宿スカラ座
新宿歌舞伎町で60年近くもの間、著名人を含む多くの人々が訪れた名曲喫茶スカラ座。200席以上ある大きな喫茶店は店舗維持の難しさなどから一度閉店し、その後同じ新宿の地下にある小田急エースの一角で再開した。当時のオーナーで二代目の林岱山さんと奥様で現オーナーの惠子さんは、別荘のある軽井沢で老後を過ごそうと新宿の店舗を閉めて8年前に軽井沢に定住した。「定住したら暇な時間が増えたので、『じゃあ規模を小さくしてお客様の集いの場になるような喫茶店をやろう』と夫が言いこの場所でお店を始めました。使っていた椅子、テーブル、飾りは倉庫で眠ってたものを使いました」とオーナー。
広告も出さずひっそりと店を開いたにもかかわらず、新宿の有名店は1年ほどで別荘の人たちに「あのスカラ座が軽井沢に」と広まった。コーヒーは創業時から同じ豆を使い、その他のメニューはオーナーが一人で提供できるものへ一新。自宅の来客時に〆の一品として好評だった「かわり雑煮」をメニューに加えたところ、「今はこれを食べに来る人が多い」というほど人気に。
新宿時代を懐かしんで訪ねてくる客は多い。オープンした2年後、来店した北軽井沢在住の夫妻は、まだ携帯電話のない時代に新宿の店で毎週デートを重ねて結婚したという。「涙を流して感動してくださったので、新宿スカラ座のビデオをお貸ししたら『これで夫婦で昔の思い出にひたれます』って」。新宿時代から使われている貴重な木彫りの飾りがある店内で「昭和を感じながらくつろいで欲しい」とオーナーは思いを語る。
軽井沢町中軽井沢6-14 TEL0267-41-0243
小田急エース時代と同じ緑色のシェードが目印。
店内には新宿で営業していた頃の写真も飾られている。