【軽井沢人物語】音楽家・歌い手 立原 綾乃 さん「軽井沢の自然が紡ぐ音楽 歌で美しい景色を届ける」

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軽井沢の自然が紡ぐ音楽 歌で美しい景色を届ける

 家の中でインストゥルメンタルのジャズが流れる環境で育った。「子どもの頃、雨の音がドレミで聞こえると言っていたそうです。10代の時に、歌うことが生きている証と思いました」

 20代から東京でライブを始め、スタンダードジャズを歌っていた。

「美しい情景が浮かぶ曲が好きで、自分なりに思い描いて歌うと、聞いた人からも『景色が見える』と感想を頂いて。見えないもので共鳴できていることが嬉しかったです」

 歌を通じて美しい世界を届けたい、そういう景色の中に身を置いて活動したいと、子どもの頃から夏を過ごしていた軽井沢で暮らすことを決めた。

 小学生の時、お使いで浅野屋やフランスベーカリーへパンを買いに旧軽井沢の別荘地を歩いて、リスや鳥、草花に挨拶をするのが日課だった。

 「その時の、なんてことのない木立の裏道のシーンが今も目に浮かびます。辛い時、何かあってもいつもその景色に救われ、その記憶のおかげで今の私がいる。みんなきっと、オアシスのように心の中に持っている何かしらの体験があって、それが私は軽井沢でした」

 軽井沢を拠点に音楽活動を行うようになり、ホテルやイベントでジャズを歌っていたが、2018年、転機が訪れる。軽井沢の森を撮影した写真のスライドショーに合わせて、インプロビゼーション(即興演奏)で歌を付けるというコラボだった。

「幼い頃から体の中で鳴っていた音楽を声にして歌いました。心の中を見せるようで、自分でもすごく勇気のいることでしたが、聞いた方に『森の中を歩いているようだった』と言われ、とても反響がありました」

 2019年から本格的に作詞作曲を始めた。軽井沢で味わった光景や自然からインスピレーションを得て音を紡いでいく。そうして出来上がった曲の中から13曲を、4月に発売するファーストアルバム「ガーデン」に収めた。アルバム発売を記念して、美しい新緑の時期に合わせ、軽井沢(5/17〜6/1)を中心に、東京(4/19)、京都(6/5)でもコンサートを開催する。

 軽井沢の楽しみは散歩。「軽井沢はここにしかない美しい景色がたくさんあって、いつもハッとさせられるギフトな瞬間がある。散歩に行くと、そういう贈り物に出逢えるのです」

 その日の天気や季節、咲いている花などで向かう場所を決める。今日も愛犬トゥッティと連れ立って散歩する立原さんを、ギフトな景色が待っている。

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