【軽井沢人物語】テノール歌手・画家 間紀 徹 さん

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鍛え上げた歌声で聴衆を魅了し続ける97歳

 今年3月で97歳。長年の鍛練により培った歌声は健在で、7月に長女の奈尾美さんの軽井沢大賀ホール公演にサプライズ登場し、イタリア民謡「オー・ソレ・ミオ」を歌い上げた。総立ちの観客からは、惜しみない拍手が送られた。

「みなさん喜んでくれるのが、何より励みになりますね」

 来日していた声楽教師の故アリゴ・ポーラ氏に見出され、1969年にイタリアへ。同国伝統のベルカント唱法を、骨格の異なる日本人の体で修得するため日々特訓。やがて発声が変わるのを感じた。

 「日本人の体で出す『和製ベルカント』ですね。今もしっかり体に身についています」

 ホテルニューオータニ東京主催で30年間続いた「クリスマス・ディナーショー」や都内大ホールでのワンマンショーなど、数々のステージを踏む。1964年東京オリンピックの日本女子新体操曲や順天堂大学校歌など、作曲も多い。音楽活動と平行し油絵制作も行い、88年には音楽、絵画2つの国際的活動が評価され、イタリア・ローマ国際芸術文化経済振興協会より金賞を受賞した。

「音楽は瞬間で消えていくけど、絵画は身体から湧き出るものを残すことができる。『右手と左手』のようなもので、その相乗作用が創作の源でした」

 結婚を機に30代から軽井沢を訪れるようになり「軽井沢集会堂でコンサートもしましたし、浅間山や森もだいぶ描きました」。2016年に移住し、奈尾美さんと暮らす。今も気が向いたときに歌ったり、水彩画を描いたりするが、公演に向け特別な準備をしたりはない。

 奈尾美さんは「ずっと歌ってきて内臓や骨格はしっかりしているので、ステージに上がれば100%どころか180%の力が出る。歌の力を示す生き証人ですよね」と父徹さんを称える。

 10月12~18日、カフェギャラリー「軽井沢はなれ山クラブ」で、奈尾美さんと「父&娘 親子展」を開く。13日には2人のコンサートも。

 顎も丈夫でステーキや焼肉もぺろりと平らげる。「とても97歳と思えない」と伝えると「もうそんな年だっけ。驚いた」と大きく笑った。

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