【軽井沢人物語】木版画家 テリー・マッケーナ さん
世界各国から生徒が集まる木版画教室を運営
浅間山や湯川、林の中の別荘など、軽井沢の風景を抽象的に、素朴で温かみのある色合いの木版画に。2022年オープンのホテルインディゴ軽井沢の各客室に飾られ、宿泊客に癒しを与えている。
「軽井沢を歩き回って見つけた実際の景色に、色々なイマジネーションの要素を組み合わせていきました」
オーストラリア・メルボルン出身。一度目にしたモノや風景を絵にするのは、幼い頃から得意だった。小学校6年生のとき「20セントあげるから」と、クラスメイトに絵の宿題を頼まれ、絵描きになることを初めて意識した。
「絵を描いてお金がもらえるなら、職業にできるかもと思ったんです。20セント?アイスクリームに変わりました」
絵画や彫刻、金属工学、鍛冶など、様々な表現に取り組み、ニュージーランドの美術大学で02年に修士号を取得。その後は油絵作家として創作活動に没頭するも09年、木版画家に転身。きっかけは引っ越しだった。
「縦横3mを超えるような作品ばかりで運ぶのに一苦労。引っ越し先が小さな家だったので、作品の置き場もない。10代から好きだった北斎や広重のようなスペース効率の良い木版画を作ろうと、そのとき思ったんです」
制作を始めるも「30枚摺ったら、20枚和紙をだめに」するなど、独学に限界を感じ11年に来日。京都の木版画家に師事し2年間修業した。
「一つの作品を仕上げるのに様々なプロセスがある木版画は、チャレンジして乗り越えて行くのが好きな自分には合っていました」
18年から妻の生まれ育った軽井沢へ。「学んだ技術を日本や世界の人たちに伝えたい」と翌年2月、住み込みで学べる木版画教室を開校。世界各国から生徒が集まってくるが、地元の通いの生徒も少なくない。
7年目を迎える軽井沢での暮らしについて尋ねると「カラダイス!(軽井沢とパラダイスを組み合わせた造語)」と一言。「山に囲まれ森は静か。四季それぞれ美しくて大好き」。
木版画初心者の外国人のための教則本、彫刻刀の手入れ法を紹介した本も制作した。福井県越前市で4月4日~7日に開く「国際木版画会議」に作品を出展するため、準備を進めている。