【軽井沢人物語】照明デザイナー 内山 章一 さん
世界で愛される名作照明「エニグマ」の生みの親
円盤型の複数のシェードを上から大きい順に等間隔で吊るした、ペンダントライト「エニグマ」を設計。デンマークの名門照明ブランド、ルイスポールセン社から、欧州出身者以外のデザイナーで初めて、2003年に商品化された。北欧の4カ国で先行販売されると、これまで見たことのないデザインと話題を集め、売れ行きも好調。「あなたの商品は『ニュークラシック』になった」と開発マネージャーに声をかけられた。
「そのときはわからなかったけど、『名作として残ること』をニュークラシックと言うらしいんです。新商品の半分は3年以内に製造を辞めてしまう世界で、ずっと売れ続けている。光栄なことです」
東京都出身。日本の照明メーカー、ヤマギワのデザイナーとしてキャリアを積み、1977年にデザイン事務所を立ち上げた。好景気で業績は右肩上がり。しかし、バブル崩壊とともに一気に商品が売れなくなり「僕のデザインも半分は販売中止になった」。
景気に左右されないものを作ろうと、一から考えを見つめ直し「デザインと言えばイタリア一辺倒だった」が、北欧の国々のものづくりに意識が向くようになった。
「無駄がなく機能的で普遍的。商品数は多くないけど、どれも名作のロングセラーばかり。そこを目指そうと、早々に切り替えたのが良かったですね」
新型コロナの流行を機に生活スタイルを見直し2021年、「北欧の森の雰囲気がある」と鹿島の森にアトリエ兼別荘を購入。友人を招いて手料理でもてなしたり、東京とは違う付き合いを楽しんでいる。「インテリアの中で光を感じてほしい」と、ショールームとしても活用する。
「光の配置や扱い方を説明するのが好きなんです。部屋にこもってデザインしているより面白いかも(笑)」
ふらっと訪れたレストランの天井、ぱっと開いた雑誌の片隅など、思いがけず「エニグマ」に出合うことも少なくない。別荘購入前に滞在した町内の貸別荘にも設置してあり、縁を感じた。
「自分の分身を見ているようで、嬉しくなる。見る角度によって表情が全く違ったり、今でも新しい発見があるんです」
これから成し遂げたいことを尋ねると「後世に残るようなものを他にも作りたい。言うのは簡単なんだけどね」と目を輝かせた。