【軽井沢人物語】デザイナー(建築・庭) とよだ みき さん
広い敷地に小さい建物の「コンパクトゴージャス」を推奨
学生時代から街の景観への興味があり、「建物と建物の間の外構を考えて作っていけば、街はきれいになる」と、ガーデンデザイナーとしてキャリアをスタート。自然を生かした暮らしやすい庭づくりが共感を呼び、セミナーを各地で開催。関連の書籍も数冊発表した。やがて庭の延長で、建築デザインにも携わるように。技術面は全くの素人だったため、ゼネコンの監督や大工の棟梁から学ぶことは多く「どの現場も学校みたいでした」。
ガーデンデザイン出身が、強みになることも多かった。
「自然の力を知って、美しさに頼ってデザインしてきているので、人間がやり過ぎちゃいけないことを、理解しているのは大きかったですね」
2000年、知り合いから軽井沢に良い土地があると聞き、興味半分で訪問。崖地から山々を一望できるロケーションが気に入り、購入を即決した。自身でデザインしたパノラマビューの広がる家がメディアで取り上げられると、崖地の建築デザイン依頼が全国から舞い込んだ。
「崖っぷちデザイナーですよね。平らな普通の住宅地よりも、土地のキャラクターや自然の色の濃い方がアンテナが働いて、全体のイメージはしやすいですね」
東京都出身。現在は軽井沢と鎌倉の2拠点生活。毎月一回、軽井沢書店でジャズバンドのボーカルとして歌ったり、冬はアルペンスキーの大会に出場したりとオフも精力的に動く。昨年からハマっているのが山登り。裏妙義丁須ノ頭(群馬県)に挑戦するも、壁のようにそびえる岩の斜面を前に断念し、途中で引き返した。
「家の窓から遠くに見えるんですね。毎朝悔しさがこみ上げてイライラするので、一カ月後に再チャレンジして登頂しました。それからは落ち着いて景色を見られています」
軽井沢の林や街並に馴染んでいない色、形の建物が多いのが、最近の気がかりだ。
「作りたいように作りたい気持ちはよくわかる。ただ、外壁の色をちょっと考えたり、せめて周囲に合う木々をたくさん植えて、建物が隠れるようなしつらえにするのがエチケットですよね」
軽井沢ではこれまで、約30軒を建築デザイン。広い敷地に小さい建物こそ贅沢という「コンパクトゴージャス」の考えを推奨する。「そういう仕事を、手がけていきたいですね」。