【軽井沢人物語】映像作家 八代 健志 さん
コビトが軽井沢を駆け回る コマ撮り作品で大藤信郎賞
自作の人形をミリ単位で動かしながら、撮った写真をつなげて動いているように見せる。ストップモーション・アニメーション(コマ撮り)の技法を使い、体長15cmのコビトが動植物と触れ合う様子を映した短編『プックラポッタと森の時間』が2月、「毎日映画コンクール・アニメーション部門大藤信郎賞」を受賞した。本格的な屋外でのコマ撮りは今作が初めて。コビトがハルゼミの羽化を見つめるシーンの撮影には骨を折った。
「日暮れ直後に羽化しそうな幼虫を見つけ、照明や人形をセットしている途中で、背中がパカッと割れて間に合わなかったり...何日もトライしました。シビアな自然のスケジュールに追われて撮っていましたね」
撮影は、新型コロナの感染拡大が始まった2020年春〜夏、ステイホームで東京の会社に通勤できない期間を利用した。
「あの時期はみんな家にいたから、どんな人が住んでいるかわからなかったご近所さんとも初めてお会いできたり...。ある意味すごく健康的と感じる部分もあったんです。何年かして、悪いことだけではなく良いこともあったよねと、この時期を思い返せるものが作りたかった」
東京藝術大学デザイン科卒業後、広告映像制作プロダクションでCMディレクターとして活動。2015年に社内ユニットを立ち上げ、様々なアニメーション作りに励んでいる。CG全盛の時代でも、コマ撮りの表現にこだわる。
「自分の手でつくるのが好きなんです。現物のある味わい、ガサガサしたような肌ざわりを大事にしたいですね」
1969年、秋田県生まれ。漆芸作家の妻淳子さんの工房に適した場所を探していたら、軽井沢に行き着いた。2009年に移住し息子と3人暮らし。
「秋田の雪は重くてべとべとで、鉛色の空から降ってくる感覚だけど、軽井沢はからっとして、雪の日も明るいことが多い。雪のいい部分を強く感じられるのが好きですね」
児童文学「ごんぎつね」をもとにした前作『ごん GON, THE LITTLE FOX』や、『眠れない夜の月』なども、軽井沢の自然から感じとったことを表現のベースにしている。次回作にはどんな軽井沢の色が加わるのか、今から待ち遠しい。