【軽井沢人物語】大内海洋コンサルタント代表取締役 大内 一之 さん
海や風の力を生かし、地球環境を守る計画を主導
大手海運会社、商船三井に勤務していた1987年、船のプロペラに取り付け、渦の発生を抑える装置「PBCF」を開発した。大幅な省エネ効果が認められ、運輸大臣表彰や造船学会賞を受賞。昨年までに累計3500隻以上で採用されている。この成功が、会社を去り、新たな一歩を踏み出すきっかけにもなった。
「もともと船全体を扱う仕事をしたかったけど、社内では特定分野の専門家にされてしまったんです。それならば好きなことをしようと、独立して会社を立ち上げました」
船舶、海洋、エネルギーに関わる機器やシステムを発案、設計する大内海洋コンサルタントを2000年に設立。水深200m以下にある、栄養塩の豊富な海洋深層水を汲み上げ、表層水と混ぜ、肥えた漁場を作りだす「相模湾拓海プロジェクト」(2000〜08年)を主導した。
「海洋の温度差を利用した発電ができ、その副産物として淡水もとれる。深層水は、大きな可能性を秘めています」
2008年、東大特任教授に就任。風力推進船を開発する産学共同のプロジェクト「ウインドチャレンジャー計画」の研究代表を務めた。風エネルギーを効率的に取り込むため、上下伸縮・旋回する硬翼帆を開発。その帆を実装した大型貨物船が、2022年の運航開始に向け、建造が進んでいる。
「今世界で走っている船の燃料はすべて重油。脱炭素に向け、船が変わる一つの試金石ですね」
会社の立ち上げと時を同じくして、「夏はエアコンが生命維持装置のようだった」東京を離れ、軽井沢へ移住した。
「涼しくて、広い土地がとれて、緑の多い場所を探していたら、軽井沢に行き着きました。2年前に新幹線が通ったばかりで、首都圏とのアクセスが良くなり、海に出やすくなったのも大きかったですね」
1947年、岩手県生まれ。外航船の船長だった父の影響で、幼い頃から船や海に親しみを持ち「船以外だったら飛行機、建築とか、何しろ大きいものに携わりたかった」。
小学一年から始めたピアノを今も続ける。新型コロナ流行前は、町内のジャムセッションイベントにもよく出かけたが、現在は自粛中。早く終息することを願い、自宅で練習を続けている。