元ソニーデザイナー 天沼 昭彦 さん

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1967年に入社したソニーで、主にオーディオ機器の製品デザインを担当。会社が海外展開を進めるなか1980年、ソニーデザインセンター・ヨーロッパ(西ドイツ・ケルン市)の立ち上げを任された。欧州各国のデパートや店舗を巡って、嗜好や傾向をリサーチ。どんなデザインが売れるか、東京へ向けレポートした。

「念願の海外だったので、首輪を解き放たれたように動き回っていました」

 その後、赴任したアメリカでは「マイ・ファースト・ソニー」というコンセプトで、子ども向けのカラフルな電化製品をプロデュース。当時のソニー製品は黒か銀が主流。原色のデザインを見た社長の大賀典雄さんは「ソニーはおもちゃ屋じゃない」と一蹴。その後、会長の盛田昭夫さんを訪ねると「一目見て『面白いね』って。全く性格の違うお二人でした」。

 もともと独立志向は強かったが、「ソニーが面白すぎて」気付くと50代に。慕っていた大賀さんが退職するタイミングで自身も独立。デザイン事務所を設立し、東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科の教授も務めた。学生には「マーケティングを知らないと『私の作品』になってしまう。交渉力や説得力も、デザイナーに必要なスキル」などと、これまでの経験を伝えた。

 母が疎開していた関係で1944年に軽井沢で生まれ、その後は東京で育った。家族の事情もあり2012年、軽井沢へ移住。佐久平総合技術高校で講師を務めたり、上田市の音響・通信機器メーカーが開発した真空管アンプのデザインを手がけるなど、信州でも縁を広げている。

 中学時代に打ち込み、65歳から再開した陸上(短距離)の練習が日課だ。日本トップ選手の練習方法を調べて実践するなど、ソニー時代に培ったリサーチ力をここでも活かしている。今年9月の全日本マスターズ陸上競技選手権(75〜79歳クラス)では、60m(8秒87)と100m(14秒15)の2種目で優勝した。

 「冬から準備して狙っていたので、嬉しかったですよ。デザインの仕事と違って、結果を数値化できるのが陸上の魅力だと思う」

 来年の目標は200mと合わせて3冠。今のタイムをキープし5年後、80〜84歳のクラスに出場すれば、日本記録を更新できるとあり「早く年を取りたいんです」と笑顔を見せた。

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