メディアプロデューサー 渡邊 満子 さん

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「祖父のように、私にしかできない仕事を」

 「満子」の名付け親は、外務大臣、大蔵大臣、内閣総理大臣などを歴任した政治家で、祖父の大平正芳(1910-1980)。時の首相、池田勇人夫人の満枝さんから一字をとって「2秒で決まったようです」。

 幼い頃から訪れた軽井沢では、祖父と過ごす時間が長かった。夕食後、一緒に懐中電灯を手に、旧軽銀座まで、かき氷を食べによく出かけた。

「大の甘党で、あんこが好きだった祖父が決まって頼むのは、『氷宇治金時白玉』でしたね」

 別荘滞在中、モンペ姿の行商のおばさんが訪ねてくると、心が躍った。

「『よっこらしょ』と下ろした籠の中から、何が出てくるか楽しみで...。とうもろこしや桃、スモモとか、美味しそうなものがいっぱい出てくるんです」

 中学・高校時代は、毎晩21時頃から東京の祖父の家に集まってくる番記者に、お酒やおつまみを提供するのが日課。党内の派閥抗争などで苦悩する祖父の姿を目の当たりにした。

「どろどろの政治の世界を10代で垣間見ました。ただ、人は人を裏切るけど、料理は人を裏切らない。ひたすら料理を作っては振る舞っていました」

 慶應義塾大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。『キユーピー3分クッキング』のディレクター、プロデューサーを歴任し20年間担当。『天皇皇后両陛下ご成婚50年記念特番』など、皇室の番組も多く手がけた。美智子さまが皇室に上がり、最初に仕事をした政治家が大平正芳だったこともあり「親近感を持って、接して頂いています」。

 2009年に退社後、書籍『祖父 大平正芳』(中央公論新社)、『上皇后陛下 美智子さま心のかけ橋』(文春文庫)を発表。ホテルオークラ東京『名家の逸品』展を企画するなど、幅広く活動している。

 「祖父は、世の中のために役立つことをしたくて、結果的に政治家になった人。私も、私にしかできないことを続けていきたいです」

 9月下旬から、東京タワー2階のアートギャラリーで始まる写真展『東京タワーを見つめた60年 皇族をお迎えして』をプロデュース。東京タワーを訪問された皇族の写真とともに、様々な色でライトアップされた各時代のタワーの姿を展示する。

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