ステンドグラス工芸家 臼井 定一さん

ph_201210_01.jpg 臼井 定一さん
 軽井沢駅の南北両エントランス。屋根と接する上部の壁に設置してある、浅間山と光をモチーフにした2つのステンドグラスは、臼井さんが代表取締役を務める「ステンドグラスバロック」(さいたま市)が制作した。これまでに公共施設や空港、学校、一般住宅まで全国各地に1万点以上の作品を手掛けてきた。
 銀座デビアスビル10・11階の「京料理花郷(はなさと)」。高さ8m、横5mの壁に、約2500ピースのアートガラスでティファニーの『ピーコック(孔雀)』を表現するなど、計11作品を創作した。
「自由に任された分、やりがいもありました。これまでで最も印象に残る仕事ですね」と振り返る。
 ステンドグラスとの出会いは、大学在学中にデザインの勉強で訪れたアメリカ・ロサンゼルス。たまたま立ち寄ったチャペルでその美しさに魅了された。
ロスの工房で基本技術を学び、1975年に帰国すると、横浜に工房を作り本格的に制作活動を開始。当時は、ステンドグラスの認知度が低かったため、「まずは知ってもらうことから」と、ランプシェードなどを作るカルチャーセンターを開講。8年間、全国各地を飛び回った。
「生徒の中には設計士や建築関係の大学教授もいて、だいぶ発注もしてくれました。広告を打てないかわりに、全国の生徒さんが宣伝して広めてくれたのが大きかったですね」
 ステンドグラスで有名な欧州の建造物は一通り巡った。中でもお気に入りは、パリのシテ島にある王家の教会「サント・シャペル」。
「ステンドグラスというと、薄暗い中にさーっと光が差し込むイメージですけど、『サント・シャペル』は、壁一面がステンドグラスで、光が"ばん"と迫ってくる感じ。パリを訪れるたびに足を運んでいます」
 1983年より、夏の間のみ旧軽井沢にギャラリーを構える。家主が高崎市で開いたカルチャーセンターに来ていた生徒の一人で、出店を勧められたのがきっかけだった。
「軽井沢の別荘の方と繋がりを持てたのは、大変ありがたいことでした。皇后陛下がお見えなったこともありました。」
 多くの客が世代交替する中、サンモトヤマの茂登山長市郎会長は、当初より変わらない顧客の一人。
「この夏もふらっと訪ねて来られました。私は今65歳で、世間からみたらもう定年過ぎ。ただ、91歳でお店に出ているサンモトの会長さんを見ていると、まだまだ老け込んでいられないな、と思いますね。」
 軽井沢店は来年30周年。「集大成をお見せできたらいいですね。」と特別な企画を今から考えている。

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