【軽井沢新聞12・1月号】世界的照明デザイナーも憂慮 夜間照明による「光害」が増加

 「隣家のライトアップがまぶしい」「夜中も明るくて眠れない」といった近隣の屋外照明による光害(ひかりがい)。対策に取り組んでいる長野県によれば、不眠や不快の原因になったり、動植物の生息・生育に悪影響を与えることがあるという。

 軽井沢町に30年以上別荘を所有しているAさんは、近隣住民の庭の夜間照明に悩まされている。自宅裏にあった500坪超の森が開発され、2023年夏、芝生の庭付き別荘が建った。8月に購入者が入居するようになると、家の周囲や庭がライトアップされ、「まるで野外コンサート会場のような明るさ」になった。外壁や玄関、庭木一本一本の根元に、下から上に照らす照明が約50個以上付けられ、枝葉を明るく照らし出している。時には朝方まで灯りがついていることも。

 「照明がまぶしくて、月も星も見えなくなりました。虫が大量に来るようになって。家の中にいても、夜中も明るくて困ります」とAさんは話す。

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左から順に漏れ光が多い配光の例(環境省「光害対策ガイドライン」より)

夜間照明は原則禁止、やむを得ない時は必要最小限、21時迄

 軽井沢町の自然保護対策要項では原則として、夜間照明を禁止している。やむを得ない場合は、必要最小限の設置、日没から21時までの使用と定められている。

 また長野県「良好な生活環境の保全に関する条例」でも、照明器具の光量を必要最小限、外に漏れる光の量を少なくし、不要な時間帯は消灯することと定めている。特に上方に漏れる光に注意し、星空環境を保全するように指導している。

 Aさんは県や町に相談しているが、状況の改善は今のところ見られないという。取材に対し、県は、光害の訴えがある場合は現地確認し、条例に該当するか確認の上「必要に応じて口頭または文書で指導を行う」。また町の環境課は"必要最小"の基準も個人によって異なる」と個別の事例の回答は差し控えるとし、町が"必要最小限"でないと判断する場合は個別指導するとしている。

照明デザイナー・石井幹子さん町に夜間景観整備を提言

 東京タワーやレインボーブリッジ、エッフェル塔などのライトアップを手がける照明デザイナーの石井幹子さんも、軽井沢の光害について懸念を示している。

 石井さんは1950年から軽井沢を訪れているが、「軽井沢で素晴らしい月の光を浴びており、また、満天の星空や流れ星を楽しんでおりました。ところが近年、様々な問題が起こり、憂慮しています」と光害に言及。

 軽井沢駅やその周辺の照明が空を明るく照らしていることや、飲食店などの多量なイルミネーション、私有地の庭園灯が深夜や朝方まで点いていることなどを問題視し、「軽井沢町・夜間景観照明整備のお願い」と題した文書を、軽井沢別荘団体連合会を通じて町長に提出した。

 石井さんは「良好な夜間景観を創るためには、まず現状の調査が必要」とし、調査方法等について協力したいとしている。「国際的にも有名な軽井沢は、自然の美しい明かりが楽しめる場所であるべきです。将来を見据えた、夜間景観整備の作成を、出来るだけ早く実現するようお願い致します」と訴えた。

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