新庁舎・複合施設の基本計画案を公表 総額110億円の見込み
具体的なプランを提示、予算大幅増
軽井沢町は7月6日、庁舎建設の具体的な計画案を発表した。現在の中央公民館なども併せて建て替え、複合施設として建設を予定している。来年度に実施計画、令和7年の工事着工を目指す。
計画案では庁舎建設52億円、複合施設29億円、太陽光設備や解体費などで29億円、総事業費は110億円の見込み。当初は庁舎建設費37・5億円、複合施設25億円だったが、太陽光発電パネルの設置や地下工事の追加、建設物価の上昇により大幅に予算が増えた。
近年の近隣市町の新庁舎建設と比べると、御代田町約22億円(2018年完成、人口1・5万人)、安中市42億円(建設予定、総事業費54億円、人口5万人)で、軽井沢町は大きく上回っている。町は事業費の財源として、積み立て基金(22年8月現在21億円)の他、地方債や助成金などを活用するという。
来庁不要の将来を想定
計画案によれば、新庁舎は現在の老人福祉センターの敷地に建設。3階建てで、1階に窓口サービス、2階に執行部や防災関連、3階に議会関連など機能別に配置する。災害時の避難場所や備蓄スペースは複合施設に計画されている。
庁舎1階は固定の窓口カウンターや専用室を置かず、自由にレイアウトできるワンルームのような造り。マイナンバーカードやスマホ等活用で、窓口業務のオンライン化を進め、将来的に来庁不要となった際には、住民サービスの窓口を失くして、交流の場などに作り替えるためだという。
立体通路にラウンジや展望テラス
中央公民館などに代わる複合施設は、現在の役場の敷地に建てる計画だ。庁舎と複合施設をつなぐ通路「まちの縁側」は1〜3階の立体的な空間で、交流スペースとしてのラウンジや大階段ホール、最上階には浅間山を一望するテラスを設ける。病院と庁舎や施設の間には「もりの縁側」と名付けた中庭を整備。駐車場は170台を予定し、国道18号西側通路に出入口を設ける。
◆
(設置を検討している、新庁舎と複合施設を立体的につなぐ「まちの縁側」のラウンジや大階段ホール。基本計画案より)
民意はどこまで反映されているか
軽井沢町では庁舎建設や周辺の整備について、令和2年にアンケートを実施。それによると、住民の庁舎利用は年3〜5回が最も多く、別荘民では0回が多数だった。また現庁舎の利便性について「狭い」16%、「わかりづらい」15%、「不便はない」14%。改善を求める点では「防災機能」19%、「手続きしやすい窓口」18%で、町が建て替えの理由とした「待合スペースの狭さ」7%、「部署の集約」10%だった。
今年度に入り、町ではワークショップや住民からの意見募集などを行ってきた。基本計画を公表した同日7月6〜14日まで、町民からの意見を募集(意見提出数7人1団体)。「高額でも良い施設をつくるべき」「高気密高断熱、自然換気、地中熱ヒートポンプなど非常に興味深い取り組み」と評価する意見がある一方、「今の庁舎を補修して使ってほしい」「シンプルで機能的且つ低コストなものがよい(観光施設ではない)」「軽井沢町全体が森の緑の町。ことさら庁舎周辺にまちの縁側、もりの縁側は不要」など厳しい声も寄せられた。
軽井沢町総務課新庁舎整備推進係では引き続きパブリックコメントなどを実施していく予定だという。
◆
ワークショップにも参加した、地域政策に詳しい大河原眞美さん(高崎経済大学名誉教授・軽井沢町自然保護審議委員)のコメント
「総事業費110億円は、22億円の御代田町の5倍、建設予定の54億円の安中市の2倍以上となり、突出している。安中市では新庁舎建設が2022年4月に行われた市長選の争点の一つであった。当選した岩井均市長は、市役所新庁舎建設の精査を行い7月には安中市は財政負担の軽減と合併特例債の活用できる新庁舎という方針を打ち出している。
合併をしていない軽井沢町は合併特例債が利用できない。当初の62億5千万円から110億円への大幅な事業費の増加は財政上大きな不安を感じる。
軽井沢は国際親善文化観光都市であり、それにふさわしい新庁舎と複合施設を求める町民の期待が高いのは当然のことである。また、軽井沢町は芦屋市と並んで、国から地方交付税の交付を受けない不交付団体でもある。台風被害やコロナ禍で、町の貯金である財政調整基金の取崩もあり、今後の浅間山噴火への備えに不安がある。不安定な国際情勢も伴うなか、近隣の市町村の庁舎の事業経費なども参考にしながら、総事業費を精査して、財政負担の軽減に努めるべきだと思う」
(浅間山が一望できるテラス。基本計画案より)