すがすがしい風を肌に感じる季節がやってきました。森の木々もすっかり芽吹き終わり、若葉を風にそよがせています。今回は、このさわやかな風に、大切な子孫を託す樹木のお話です。
 川沿いを歩いていくと、一陣の風。その風の中にたくさんの白い綿毛が一斉に舞い上がりました。こんな時、辺りをよく探すと、真っ白な綿の穂がいくつもついた木があるはずです。それはヤナギの木。綿毛はヤナギから飛ばされていたのです。綿毛の中には、ほんの1ミリ程度しかない小さな種があります。じつは、綿毛は風で遠くに種を運ぶためのヤナギの工夫なのです。
 種の行方は風まかせ。うまく風に乗れば、1キロ以上も移動できるといいますが、どこまで飛ばされるのか、どんな所にたどり着くのかは分かりません。寿命が数日間しかないヤナギの種は、たどり着いた新天地ですぐに発芽します。
 軽井沢の森でよく見るハルニレも、風に種を飛ばす樹木です。今ちょうど種をつけていて、森に風が吹くとはらはらと降ってきます。直径1センチほどの薄っぺらいハルニレの種は、翼果(よくか)といって、種の周りの薄い皮は、風を受けやすくするための翼です。ヤナギに比べると移動距離は短く、平均200メートルくらいですが、ハルニレの種も着地後すぐに発芽するのです。
 初夏の風に早くも種を飛ばす樹木たち。目の前の親木に比べてなんと小さな種でしょう。余分な栄養は持たずに、実を小さく軽くして風に乗り、着地後すぐに発芽する種に、強いバイタリティを感じませんか?

※写真をクリックすると拡大写真が現れます

写真上:イヌコリヤナギの綿毛

写真下:ハルニレの林

 

 


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