北杜夫夫人ら鼎談 「劇団樹座の名優、北杜夫」を語る
2012年08月27日 14:15
軽井沢高原文庫は8月25日、 人劇団「樹座」に出演した、作家の北杜夫さんのエピソードを関係者が語り合う、高原の文学サロン「劇団樹座の名優、北杜夫」を開いた。「樹座」は作家の 藤周作さんが1968年に立ち上げた劇団で、作家や編集者、公募で集めた一般人など演劇の 人ばかりが出演。27年間で21公演を行い、北さんも定期的に出演していた。
この日は北杜夫夫人の齋藤喜美子さん、樹座の中心メンバー った作家の 藤宗哉さん、同じく元新潮社編集者の宮辺尚さんが、約200人の聴衆を前に、同文庫の中庭で鼎談した。北さんが石像や火星人の役で出演した実際の 像を交えながら、当時のことを振り返った。 藤さんは「北さんはストーリーに関係ない 面で出演することが多かったが、酔っぱらって登 し劇を無茶苦茶にすることがあった」と話すと、喜美子夫人は「主人は本来引っ込み思案で人前に出るのは苦手な人。 藤さんのことが大好きでしたから、テンションが高いときに誘われて、つい乗ってしまったの と思う」と続けた。
また、躁鬱病を発症した北さんが、 画製作の資金集めとして の売買にのめり込ん ときのエピソードで、喜美子夫人は「小学生 った娘のお年玉貯金までも使いきった」と告白。宮辺さんが、「 でお金がプラスになったことは」と尋ねると、喜美子さんは「一度もございません」と返した。
最後は客席で観ていた北さんの娘の由香さんも壇上で挨拶。「父が躁鬱病になってからは、生活が一変した。それでも家族ばらばらにならなかったのは、家に父のユーモア心が溢れ、それを受け止めるしなやかでしぶとい母がいたから」 と めくくった。
軽井沢高原文庫では10月8日まで、「北杜夫展 美しい夢とユーモア、ふたたび」を開催中。「どくとるマンボウ航海記」の直筆原稿や、親友の辻邦生さんとの書簡のほか、樹座に出演した際の北さんの写真なども展示している。TEL0267-45-1175(軽井沢高原文庫)